新しく居合を始められる方にいつもする話があります。
「はいている袴の襞は全部でいくつありますか?」と聞きます。
「前が五本で後ろが一本ですよね。」
「そうです。なぜ、前は偶数ではないのでしょう?右も左も同数だと思ってませんでしたか?」
前は外から内側に向って折られた襞は、左が三本、右が二本ということになってます。
右が一本少ない??
なぜでしょう。
実はこれには陰陽の考えがあると言われいます。
方位でいうと南と東が陽、西と北が陰。
人体についても南面した時に太陽の昇る方(陽)の左半分を陽、逆に日の沈む(陰)西側の右半分を陰としてます。
一般に「八相の構え」でも右側に刀を立てる構えを「陰の構え」といいます。反対は「陽の構え」です。
稽古着も前襟を合せるとき、左を上に、右を下に重ね合わせます。
身体の左側が陽になるので表に出すというわけです。
物事にはいろいろ意味があるんですね。
つけ加えると奇数は陽、偶数は陰と言われます。
これも袴の襞の数が合いますね(左は三本で奇数で陽、右は二本で偶数で陰)。
袴の五本の襞は儒教で言う「五常の教え」をあらわすとも言われます。
ご存じの通り「仁義礼智信」です。
また、後ろの一本の襞は二心がないことを示していると。
こじつけのような気もしますが、そんな袴をはいて稽古をするという心が大切です。