会員のIさんから久保俊治氏「羆撃ち」という本をお借りしました。
なかなか臨場感ある美しい文章で感動しました。
しかも、武術をやる人間にとって気になる文章がたくさん出てきます。
長くなりますが、引用させていただきます。
「一つのことだけに心を奪われ過ぎずに、あたり一帯に均一な緊張感で注意を払わなければならない。特に目を見開いて探すより半目にして見るほうが、微かに動くものでも目の隅で捉えやすい」
これはまるで五輪書にあるような「目付」のようです。
「あの異質に感じた空間、いると確信した空間のことを考えていた。ー略ーあちこちで鳴いている小鳥の声が、羆の潜んでいるあたりからはなかった。しかし、なぜ小鳥が鳴いていなかったのだろう。そうか。あれが殺気というものなのだ。仔羆を守ろうとする母羆の必死な思いが殺気となり、鳴くことを小鳥にためらわせたのだろう」
そのほか、「闇からの気配」、「間合いの習得」など、もちろん狩りに関するものですが、武術に通じるものが満載です。
そして「残心」にも通じる文章も、ありました。
「じっと眺めてやることが、死んでいったものに対する畏敬の念の、私なりの表し方である。勝ったと思う気持ちと、緊張が解けていく安堵感、その後からふつふつと喜びが湧いて、体の隅々までけだるく広がっていく。」
これほどリアリティのある「残心」があるだろうか。
Iさんは「羆撃ち」をやられていますので、この感覚を体験しているのでしょうね。
すごい!