話は「剣客商売」です。
横川彦五郎はかつての辻道場の同門で剣一筋。剣を極めんがために女房ももらわなかったという人物です。
剣術修行に明け暮れたその横川彦五郎は今では年老いて病に罹っています。
そんな彼は秋山小兵衛にこんなこと言います。
「若い頃あれほど打ち込んだ修行も歳をとれば跡形もない。全てを投げ打って結局、わしに残ったものといえば老いさらばえたこの身一つだ」
秋山小兵衛はこう応じます。
「おまえさんも、わしも違いは無い。おまえさんはほんの少し剣術に夢中になっただけの事だ」
おじさんはこんな何気ないやり取りにも心が動きます。