先日、稽古場でMさんと相撲の立ち合いの話になりました。
海外の方も相撲を見る機会が増えてきたことから、よくこんなことを聞かれます。
「何故、試合前に何度も同じ動作を繰り返すのか?」
海外の方にしてみれば、行司(彼らはこれを審判と思っている)がいるのだから「はっきよお〜い!のこった!」の掛け声でスタートすれば良いではないか、と言うのです。
これを彼らに説明するのは大変難しいです。
ボクシングならゴング、柔道なら「始め!」の合図で始まります。でも相撲は相手力士との呼吸(気)が合って初めて取組みが始まります。行司が発しているのは試合開始の合図ではありません。その証拠に行司が発した「はっきょお〜い!のこった!」の後でも立ち合いが成立しないことがあります。スポーツの試合ならその時点で立ち上がらなかった力士が負けになるはずです。でもそうにはなりません。
この「立ち合い」は極めて日本的です。行司の合図ではなく両者の呼吸(気)が合った時に初めて取り組みが始まる闘いこそ昔の武士の闘いだったのではと思っています。その証拠に「立ち合い」は武士の勝負そのものを指す言葉でもあります。(「立ち合いを所望する!」というような使い方をします)
二人で行う剣術形でも始まりの合図はありません。二人の呼吸(気)が合った時に始まります。ですから時々、合わない時もあります(笑)
多分、この立ち合い以外で闘うことは武士にとっては卑怯なことだったのではないかと感じています。