居合の所作には「血振り」と言うものがあります。要は人を斬った後で刀についた血を刀を振って払うわけですが、この血振りから納刀の一連の所作は流派によっても違いがあってなかなか見応えがあります。
しかし、血液というやつは結構しぶとくておそらく振り払ったくらいでは取れなかったと思います。そのまま納刀したら大変なことになるはずです。
生き物を斬れば血だけでなく脂の付着が避けられません。血や脂に含まれる塩分をそのままにすると刀身は直ぐに錆びてしまうでしょう。
さらに時間が経つと血液が固まって落ちにくくなるはずです。
これを振り払っただけで落とそうというのは無理がありますね。では実際にはどうしたんでしょうか?
以下の順番で血拭いをしたと思われます。
①まず手拭いや袴などで荒拭いをする
②懐紙で血脂を拭き取る
③鹿のなめし皮でさらに血脂をよく拭き取る(鹿のなめし皮は刀油を落とすための刀の手入れ道具の一つです)
これが現実でしょう。その場では②くらいまでかも知れません。
実は刀に着いた血脂を落とすやり方には流派によって変わった秘伝があったようです。
「早稲の灰でよく落ちる」
「6月の土用にモグラを捕って皮を剥いで貯えておき、唾をつけて血のりを拭うとすぐに落ちる」
「馬糞の干したもので拭っても効果がある」
灰くらいならまだいいですが、モグラや馬糞はちょっと・・・でも仕方ないかあ。いつの時代でも刀は高いですからね〜。
血振りから変な話になってしまいました。