私が参加している日本美術刀剣保存協会の刀剣鑑定会では鑑定の際には前方に黒幕を張り白熱電球の光が乱反射しないような設営をします。確かにこうすることで匂口や刃文はよく見えます。
しかしある先生からは錆色や地鉄や地肌を見るのには日光が良いと教えて頂きました。
さらにある刀屋さんは日本刀の美しさを味わうには和蝋燭の灯が一番なんだと言いました。
夜、部屋を閉め切り、真っ暗闇の中、和蝋燭の灯の下で日本刀に顔を近づけ舐めるように観る・・・
ん〜これはかなり妖しい・・・
実行する時には家族への十分な事前説明が必要になるでしょう(笑)
正月番組でNHK 「THE 陰翳礼讃〜谷崎潤一郎が愛した美〜」を観ました。
谷崎潤一郎の美の世界を映像化することにチャレンジした番組でした。
番組の中で一番驚いたのは漆黒の闇に置かれた畳を和蝋燭の灯火のゆらめきの中に映し出した映像です。
谷崎潤一郎は「陰翳礼讃」の中でこう表現しています。
「畳の上に幾すじもの小川が流れ、池水が湛えられているごとく、一つの灯影をここかしこに捉えて、細く、かそけく、ちらちらと伝えながら、夜そのものに蒔絵をしたような綾を織り出す」
畳がこれほど美しく見えたことはありません。映像にはまさにその「小川」が映し出されていました。
掻き寄せて結べば柴の庵なり
解くればもとの野原なりけり
「美は物体にあるのではなく、陰翳のあや、明暗にあると考える。-中略-陰翳の作用を離れて美はないと思う」
日本刀もやはり陰翳の中に本当の美しさを秘めているのでしょうか?
一度試してみる価値はありそうです。
まずは和蝋燭を手入れる必要があります。
いやその前に家族への事前説明ですね。和蝋燭の入手だけでも慎重な説明が必要になりそうです(笑)