壺中天

「鑑賞マニュアル 美の壺」というNHKの番組があります。大好きでよく観ます。

 

暮らしの中に隠れた美しいものを30分で伝える番組です。

 

対象は日本刀の時もありました。着物、そして日本酒、すし、家具や建物など多岐にわたります。別に日本に特化しているわけではありません。

 

草刈正雄氏の小芝居がちょくちょく入りますが、なかなか面白い番組です。

 

その草刈正雄が小芝居する家の床の間には「壺中天」と書かれた掛け軸がかけられています。「こちゅうてん」と読みます。

 

「壺中天」とはなんでしょうか?

まあ番組名が「美の壺」ですから美のツボにハマるの「壺」なんでしょうか・・・?

こんな小さなところにも面白い意味が潜んでいました。

 

陽明学者であり、政界の黒幕とも言われた安岡正篤氏が座右の銘にしていた言葉に「六中観」というのがあります。

その中の一つに「壺中天」があります。「六中観」とは

 

忙中閑あり

苦中楽あり

死中活あり

壺中天あり

意中人あり

腹中書あり

 

の六つの教えです。

それぞれ何となく意味は分かります。

ただ「壺中天」だけは???

 

これには少し説明が要ります。中国後漢書の中に出てくる話が元になってます。大体こんな話です。

 

仕事中の役人の男が通りを眺めていると店で壺を売っている老人がいる。やがて店が閉まると老人は店にある大きな壺の中に入っていった。仕事が終わってから役人の男はその老人をつかまえて問い詰めた。老人は「見られてしまったか。では仕方がない。ついてきなさい。」と言って大きな壺の中に誘った。ついて行ってみるとそこには花が咲き、鳥が鳴き、真っ青な空が広がる別世界があった。

 

いろんな意味があるとは思いますが、どんな世俗の中に生きていようとも自分独自の別天地を持つことが必要だと解釈しています。

 

狭い壺の中にも広々とした天がある

 

あなたには「壺中天」はありますか?

 

ちなみに安岡正篤氏は晩年にかの細木和子氏と「婚姻関係」があったと言われています。もしかしたら安岡正篤氏の「壺中天」は細木和子氏だったのかもしれません。