家紋の意匠は実に日本的です。
西洋にも紋章はありますが、それとは随分と趣きが異なります。
前回の静稽録で紹介した「女色を好むこと切なり」と書かれてしまった浅野内匠頭長矩の浅野家の家紋は丸に違い鷹の羽です。
あくまで私の想像ですが、鷹のような家の強さを表現したかったのではと思います。また鷹の羽はクロスしており、そこには守りの意味も感じられます。さらには鷹の羽根は和弓の矢羽根にも使われていたこともあるようで、当時の主力武具の一部を表すことで強さを増す意匠になっています。
それでもそこには鷹自体は描かれていません。西洋の紋章ではライオンや鷹、鷲などのいかめしい動物が直接的に表現されているものが多いのに気付きます。さらには槍や盾などの武器もそのまま描かれています。
こうした直接的な表現は日本人には受け入れられなかったのかも知れません。
例えば天皇家は菊や桐などを用いていますし、他の家紋でも強力な動物などはあり見かけません。
日本の動物紋としては鶴、鹿、馬、猿、兎、雁、千鳥、鳩、雀、蝙蝠、亀、海老、蟹、蛤、蝶、蜻蛉などがありますが、どれもあまり強力な生き物ではありません。
唐獅子はあるようですが、まあこれは悪い気を食べてくれるという想像上の神獣です。
さらには多様な植物の家紋が多いのもつくづく日本的だなあと感じる訳です。
実は私の家の家紋は丸に角立て四つ目なのですが、この紋は元々、もと染めの形が由来だそうです。纐纈(こうけち)染といって、布地を糸でくくって、染料に浸すとそこだけ染め残り目が出来ます。これを紋様にしたのが目結(めゆい)紋です。
結いとは糸で結ぶことから一族の団結を意味するそうで、ああ私のご先祖さまは「一族結束」の想いを家紋に込めたのだなぁと遠く思いを馳せるのであります。
一度、ご自分の家の家紋のことを調べてみるのも面白いと思います。