松浦静山は「甲子夜話」(平凡社 東洋文庫)の中でこんな歌を書き留めています。
しは(皺)がよる ほくろが出来る 背がかがむ
頭ははげる 毛はしろくなる
手はふるう 足はひよろつく 歯はぬける
耳は聞こえず 目はうとくなる
身にあふは頭巾 えりまき 杖 目がね
たんぽ 温石 しびん まごの手
くどくなる 気みじかになる ぐちになる
思いつく事みな古くなる
聞いたがる 死にともながる 淋しがる
出しやばりたがる 世話やきたがる
又しても同じ話に 孫ほめる
達者じまんに 人をあなどる
老人をここまで言わなくとも・・・
とは思いつつ、思い当たることが多いのも事実です。
でも歳をとるのは仕方がないことです。
誰でも必ず歳をとりますから。
私は頑固ジジイは嫌いじゃあありません。しかし「お元気ですねー」なんて言われてその気になっている「老将」は困りものです。
元気な「老兵」なら問題はありませんが「老将」となるとちょっと話は違います。身体は丈夫でも頭が古い「老将」の下にいる若い兵士たちは大変です。またそんな「老将」も哀れです。
自分だけは違うと他の「老将」を批判をしている「老将」もしっかりボロが出てます。そんな人は自覚がないから尚更始末に困ります。
人はそんなに簡単に変わることは出来ません。歳を取れば尚更です。仮にそれが出来たという人がいたとすれば、その人のそれまでの人生はなんだったのか?と思ったりもします。
「後進が育っていないから」といつまでも道を譲らない「老将」がいますが、後進が育っていないのは自らの責任です。未熟な後進でも「老将」より未来があるだけよっぽどマシです。
自分の時代を懸命に生き抜き、自分の時代は終わったと悟って静かに後進に託す老将こそ尊敬されます。
ちなみに先の歌を書いた松浦静山は幕政参加の野望を抱きながらも第9代平戸藩主を47歳で隠居したのちに「甲子夜話」を書き、82歳で亡くなりました。
彼は心形刀流の免許皆伝も得ています。さらには「剣考」「剣談」「心形刀流剣術諸学書」などの剣に関する執筆もあり、文武に長けた人だったようです。
しかもこの松浦静山さん、隠居してから亡くなるまでに7人の女性との間に男子11人、女子9人のお子さんをもうけたそうです。
お元気だったんですね〜