「子連れ狼」はよく観てました。
拝一刀(萬屋錦之介)の殺陣は凄かった!
今、居合や剣術などをやっているのは、もしかしたら拝一刀の姿が目に焼き付いているからかも知れません。
拝一刀は「公儀介錯人」です。
もちろん「公儀介錯人」という役職はありません。しかし、音で聞いても「こうぎかいしゃくにん」という響きはすでにカッコイイ。そしてその後に「おがみいっとう」と続くともう完璧です。まあ「公儀介錯人」の前に「元」が付きますが。
しかし現実の切腹を介錯する人は大変だっただろうと想像します。実際には介錯する人は一人ではありません。「介錯」の他に「添介錯」「小介錯」と三役があったそうです。
「介錯」はもちろん切腹する人の首を落とす人、「添介錯」は短刀を乗せた三方を持ってくる人、「小介錯」は切腹終了後に首実検に供える人になります。
介錯は添介錯が三方を切腹する人の前に置くの見計らって身構えをします。そして切腹する人が三方を引き寄せようとして手を伸ばし、首筋が伸びた瞬間に・・・
えっ!腹は切らないの?
まあそれが理想でしょうが、実際に腹を切った例はあまりなかったそうです。
そうなると介錯が刀を振り下ろすタイミングはかなり難しくなります。
天保年間に書かれた「自刃録」(沼田藩士工藤行広著)にはそのタイミングについて「四ッの間」を示しています。(「三ッの規矩」というのもあります)
1番目は添介錯が三方を据えて退く時
2番目は切腹人が三方を引き寄せる時
3番目は刀を取る時
4番目は腹へ短刀を突き立てた時
また添介錯が三方を置く時には切腹人から三尺ほど離すそうです。
「兎角に前へおびく工夫をするなり」
切腹人の身体が前に伸びるようにするのが添介錯の役目であり、もし切腹人が三方をもっと近くにして欲しいと言われた場合でも「これが定法でござる」と断ったそうです。
またこの介錯とは別に「介添」もいました。こちらは小刀を差し、切腹人が暴れた時に取り押さえたり、小刀で刺して大人しくさせる役目です。また恐怖で切腹人が立てない時などは立たせて歩かせることもあったそうです。
ちなみに拝一刀の愛刀はご存知「胴太貫」ですが、本来は肥後地名の「同田貫」が由来と言われています。しかし試し斬りの時に胴を切り貫き、下の田まで切り裂くことから「胴田貫」などとも呼ばれており、フィクションとはいえこちらの方が俄然インパクトはあります。
テレビで初めて「子連れ狼」を観た時には「ドウダヌキ」という音に戦国の響きを感じました。音も大事な演出だったのかも知れません。