「日残りて昏るるに未だ遠し」
藤沢周平作「三屋清左衛門残日録」NHKで1993年に放映された番組です。冒頭にこの言葉が流れます。
三屋清左衛門は元用人で今は息子に家督を譲り隠居したばかりの身。すでに妻には先立たれています。
無外流の使い手で最近では道場にも復帰して子供たちを指導しています。まだまだ若いもんには負けんと頑張っていますが、やはり周りからは「御隠居」と呼ばれる日々。
三屋清左衛門は仲代達矢が演じています。物おじしない息子の嫁里枝役には南果歩。この役柄がまた良い。
幼馴染で現役奉行の佐伯熊太役の財津一郎もいい味出してます。その他の俳優も名優揃いです。
もうそれほど生臭くはないものの、完全に乾き切ってもいない絶妙な「半生」の年齢を楽しんでいる日々は自身にも重なるところがあります。
「老骨に鞭打つ」
「年寄りの冷や水」
「老醜を晒す」
「少年老い易く学成り難し」
「老いては益々盛んなるべし」
「老馬の智」
「老い木に花」
ドラマを観ながらいろんなことわざが頭に浮かびました。
そんな三屋清左衛門が好きな漢詩が出てきます。
王維「辛夷塢」
木末芙蓉花
山中発紅蕚
澗戸寂無人
紛紛開且落
木の梢なる芙蓉の花
山中に紅き花を開き
谷の枢(とぼそ)には廖(せき)として人なく
芬々(ふんぷん)として開きかつ落つ
人生も稽古もかくありたいと思うのであります。
ただ一つ、ドラマの中の三屋清左衛門の言葉
「いい嫁は味噌汁が美味い!」
これには同意出来かねます。