居合は「抜刀」などとも言われたりします。「抜く」という言葉の意味を辞書で調べると「中から取り去る」と書いてあります。
その意味の通りだとすれば居合は「抜刀」ではないかもしれません。
おそらく居合をやっている人は分かると思いますが、技術的には鞘から刀を抜くではありません。
居合では「鞘引き」という言葉がよく使われます。居合を始めた人は稽古中に何回もこの言葉を耳にするのではないでしょうか?
刀を動かして鞘から刀を抜くのではなく鞘を動かして刀を鞘から出す
このことを「鞘引き」と言ったりしている人もいます。
そしてこれを言葉通りに受け取って「鞘を引いて」いる人も多いようです。
わかりにくいので最近の稽古では「鞘引き」という表現ではなく、もう少し別の視点から説明するようにしています。
私には決して鞘を引いているという感覚はありません。
全身操作の結果論として鞘と刀が離れていくという感覚です。
時には「鞘を動かさない」「鞘を置いていく」などと言ったりします。
もちろん刀も抜きません。
まるで禅問答のようですが、これこそが居合の妙だと思っています。
ちなみに2019年4月13日付けの静稽録の「鞘引き」はやや違う観点から「鞘引き」について書いています。