いくつになっても、どんな場でも人様の前で何事かを披露するというのは緊張するものです。
そして披露を迎えるまでの時間の中でいろいろ考えたり迷ったりします。
そんな時にNHK番組「最後の講義」という柄本明さんの演劇講義を観ました。
柄本明さんは「怪優」と言われています。ひょうきんな役から凄みのある役までこなす幅広い役者さんです。また個性的な役者さんを抱える劇団東京乾電池の座長さんでもあります。
所属劇団員のテレビ出演も多くなったり、息子さんたちも活躍して、最近では大物感も漂います。
そんな柄本明さんが演劇をもっと上手くなりたいと思っている人たちに講義をした番組です。
柄本明さんは集まった人たちにトライアルでいろいろなお芝居をさせてみます。
そして「それでいいの?」と繰り返します。
戸惑い、悩みの底に沈んだ人たちに彼はこんなことを言います。
「上手くいかない時にぶち当たった時って・・・そういう風にはなかなか考えられないんだけど、ものすごく面白いんじゃあないかね?上手くいかない自分・・・ところが人間は上手くいっている自分が好きだよね。だから考えるの、考えるの、考えるの」
講義の中には「見巧者」という言葉も出てきます。
見ることの巧みな人?
これもヒントなんでしょうか?
彼の言葉が続きます。
「上手くいった自分が好き、上手くいかない自分は嫌いさ。でも上手くいかないっていうところになんかきっといろんなことがある。だから考える。それから(演劇は)一人でやっているのではないということ。これがものすごく大事ね・・・そこで何かが生まれる」
悩むこと、迷うこと、考えること、そして周りの人とのやり取り、彼は全てを含めて演劇を捉えていることがわかります。柄本明さんは本当に演劇が好きなんだなあと感じさせるシーンでした。
戸惑い、悩みの底に沈む人たちの姿と来週には演武披露の場に立つことになる自分が重なります。
長く生きてきた自分が普段の稽古以上のものは出てこないと自分自身に言い聞かせます。