「日本刀を生み出す奇跡の鉄」と言われる玉鋼。
たたら製鉄で生み出される鉄は1000年もつと言われています。日本刀の他にも茶の湯で使われる茶釜や寺院や仏像など文化財の修復には欠かせないくぎやかすがいなどにも使われます。
少し前ですが、その玉鋼作りを題材にしたNHKドキュメンタリー番組「玉鋼に挑む」を観ました。
玉鋼作りはまさに戦いの連続です。
画面にはトラブルの連続で苦悩する職人たちの顔が映し出されます。
それでもそこにはモノづくりに参加している嬉しさを隠せない顔もありました。
玉鋼作りの操業開始前に釜を作るための下地の床を3日かけて作り込む下灰(したばい)という作業があります。これは全員参加で力を合わせ、声を合わせて行います。
炎で焼けた顔
苦しそうな顔
嬉しそうな顔
楽しんでいる顔
どれもいい顔をしています。
総監督である村下(むらげ)の木原明さんは当時86歳でした。後継者育成の不安に加えて、日本で唯一「たたら製鉄」を行なっているこの日立金属は投資ファンドに売却されることが決まっています。
日本刀にも高齢化と経済効率の波が迫っています。
すでにもう遅いのかもしれません。
川崎晶平刀匠にお願いして私に日本刀を遺した「日本刀ど素人」の父は亡くなる直前にこんなことを言ってました。
「頼んだ日本刀は当初は随分と高いものだと思ったが、これには神社などに奉納される日本刀を作る分も含まれているんだと知って納得がいった」
当時はこれが「日本刀ど素人」の父なりの理解なんだと思ってました。
しかしあの父がなぜ古い刀ではなく、あえて現代刀を遺したのかを考えると、もしかしたら父は全てを分かっていたのかもしれません。