きれいと美しい

自分の差し料を探し始めた頃、ある刀屋の店主にこんなことを言われたことがあります。

 

「きれいと美しいの違いがわかりますか?」

 

もしかしたら店主から見て当時の私はきれいな刀にばかりに反応すると見られていたのかもしれません。

 

その後、多くの刀を見ることで店主の言った言葉の真意が多少わかるようになりました。

刀剣鑑定会にも通い先生方や諸先輩にもたくさん教えていただきましたが、むしろいろいろな刀屋の店主から教えていただいたことの方が多かった気がします。

 

先日、東京都立美術館で「岡本太郎展」を観てきました。

岡本太郎はこんなことを言っています。

 

「きれいと美しいは正反対なんですよ」

 

もしかしたら刀屋の店主の言葉は岡本太郎の受け売りだったかも知れません(笑)

 

岡本太郎は大きく見開いた目で両手を広げながら熱く語ります。

 

「心が宇宙に向かって飛び散るんだ!」

 

そしてあの有名な言葉。

 

「芸術は爆発だ!」

 

以前、作刀現場を見学させていただいたことがあります。

作刀は文字通り「爆発」でした。

 

火床からうなりをあげる炎と太陽の様な玉鋼。

皮膚が焦げるほどの熱さと張り詰める緊張感。

そこに刀鍛冶の気迫が加わります。

狭くて薄暗い空間で目の前まで火花が飛び散り、玉鋼を叩く大きな音が体を突き抜けていきます。

 

ある人の頭に鉄の火花が落ちて大慌ての場面もありました(笑)

明るいところに出てよく見ると、服には焦げ跡がいくつも・・・

 

美しい刀が出来上がるにもやはり「爆発」が必要なようです。

 

「まっさらな目をもて!

そして目的を捨てろ!」

 

これも岡本太郎の言葉です。

好きな言葉です。