孤独な老人

先日、稽古終わりにみんなで昼食をとっていました。

ところがどうも後ろの席が騒がしい。

なんだか老人と若者?が揉めている模様。

 

老人「テメェ!なにチラチラみてんだ!」

若者「見てないですよ」

老人「さっきからオレの新聞を見てたじゃねえか!」

 

実はこの老人、四人掛けのテーブルに1人で座り、隣でニ人掛けのテーブルに座っている若者に文句を言っていたのですが、わざわざ若者の近くの側の席に座って新聞を広げて読んでいたんです。見た目は普通の老人です。

若者は不審に思って老人を見ていたんだろうと思います。

 

「テメェ!オレは70歳なんだぞ!表に出ろ!」

 

もう意味がわかりません。

そう言って老人は1人で店を出て行きました。

 

そんな時、一緒にいた静稽会のAさんがそっと店員さんに言いました。

 

「新手の無銭飲食かもしれない。お金を支払ってもらった方がいいですよ」

 

老人の剣幕に気を取られて、全く思いもつきませんでした。

なるほど!

確かにその可能性も排除出来ません。さすがはAさん!

 

ところが豈図らんや、老人は戻ってきました。そして警察を呼んだと言いながら相変わらず若者に絡みます。

 

やがて本当に警察官が来ました。しかも4人も。

老人は警察官にやれ防犯カメラを見てくれ、こいつが足を蹴ったなどと大声で怒鳴り散らしています。

 

2人は警察官に店の外に出されました。若者のテーブルにはまだ食べかけの食事がそのままです。

 

警察官の1人が戻ってきて私たちに事情聴取を始めました。

「目撃者」の私たちは事実を告げて店を出ましたが、外は雨が降っていました。

老人と若者と警察官たちのやり取りは雨の中でも簡単に終わりそうにありません。

トラブルに巻き込まれてしまった若者に同情しつつ私たちはその場を離れました。

 

それにしてもあの老人は何がしたかったのか?

 

おそらく孤独だったのだろうと推察する訳です。

 

孤独な老人の歪なコミュニケーションの取り方に背筋が寒くなります。

また孤独は精神疾患である妄想性障がいの原因になるそうです。

あの老人は既に病の域に入っていたのかもしれません。

 

孤独については静稽録に2018年6月10日「孤独と健康の関係」と2018年1月28日「孤独担当大臣」にも書きました。

あの老人に稽古相手がいたら、少しは変わっていたかもしれません。