所作の壁

新しく入会された方々が最初にぶつかる壁が所作です。

細かくて覚えるのはなかなか大変です。

 

「なぜこうしなければならないのか?」

 

もちろん理由はあります。

しかし敢えてあまり細かなことを説明しない時もあります。

 

理由が分かった方が覚えやすいという方もいるかと思います。

それでもなるべくなら丸ごと体で覚えて欲しいと願っています。

 

もっとたくさんの細かな所作がある茶道などでは「なぜそうするのか?」という門人に対して「しらない」と突き放す師匠もいます。

 

どうしてそんな対応をするのでしょうか?

 

師匠は頭で考えることを排除して、まず体で向き合うことを求めています。

 

四苦八苦しながら所作に向き合っていると、ある時、頭で考えなくても自然と体が動く瞬間が訪れます。

 

そして無駄のない美しい動きが体に馴染む頃には心地よいと感じると思います。

 

考えてやる所作は単なる動作です。

心地よいと感じる様になって初めて所作本来の存在意義に気がつくと思います。

 

頭で考える所作は時間とともにいずれ消えてしまいますが、体にしみ込んだ所作は頭が忘れても体が覚えています。


早く所作を覚えたいと焦る気持ちもあるかもしれませんが、じっくり所作の壁に向き合って欲しいと思っています。所作の壁を正しく超える方法は何度も何度も体に刷り込む様に繰り返しやることです。

 

稽古場の外では効率に振り回されている私たちですが、稽古場は別世界ですから効率を求める必要はありません。


所作が心地良くなるまで何度でもお供します。