「赤城の山も今宵が限り、生まれ故郷の國定村や縄張りを捨て、国を捨て、可愛い子分の手前(てめえ)たちとも別れ別れになる首途(かどで)だあ!」
子供の頃、このセリフが大好きでした。
私が育ったところからは赤城山がよく見えました。
そんな赤城山に国定忠治の姿を重ねてよく眺めていました。
今、私の家には赤城山のシルクスクリーンが飾ってあります。
それを見るたびにあのセリフが蘇ります。
十数年前に稽古仲間で新国劇の「国定忠治」を真似て演じたことがありました。
その時、主演の国定忠治役をやったSさんは今でもみんなから「親分」と呼ばれています。
「親分」は私のイメージした「国定忠治」にピッタリでした。
「親分」のセリフは続きます。
「加賀国小松(かがのくにこまつ)の住人五郎義兼(よしかね)が鍛えた業物(わざもの)、万年溜まりの雪水に浄めて、俺にゃあ生涯(しょうげえ)手前(てめえ)という強え味方があったのだ!」
ここまでが「親分」のセリフ。
本番では見事に決まりました。
動きとセリフのタイミングを合わせるのは一苦労でしたが、それだけに「親分」の想いは強かったと思います。
「親分」は自前の着流しでこの役を演じました。それもまたカッコイイ!
今では私の中で「国定忠治」は完全に「親分」のイメージになってます。
その「親分」は静稽会ホームページ表紙の「試斬アーカイブ」で見ることができます。
見事な斬りでこちらもカッコイイ!
加えて「国定忠治」の差料「五郎義兼」は作刀数も少なくビックネームの刀工ではありませんが私の中では憧れの刀です。
一度この刀工の刀を実際に見てみたいと思っています。