本日、重要無形文化財保持者、簡単に言うと「人間国宝」の五街道雲助さんの落語を聴く機会に恵まれました。
その前をつとめたのは柳家喬太郎さん。
足の具合が悪いのか柳家喬太郎さんは講談師の講釈台を借りて話をしていました。正座するのも辛いのでしょうか。心配です。
トリの五街道雲助さんの演目は古典落語「淀五郎」でした。
あまり落語を聴かない人には馴染みがないかもしれません。
これは若手歌舞伎役者の澤村淀五郎と彼を大抜擢した座頭の市川園蔵、そして淀五郎にアドバイスする初代中村仲蔵の噺です。
歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」の塩治判官役(浅野内匠頭)に抜擢された淀五郎ですが、張り切りすぎて、上手くやろうと知らず知らずのうちに浮き足立ち、演技が空回りしてしまいます。淀五郎を抜擢した大星由良之助役(大石内蔵助)の市川園蔵は判官切腹のシーンで本来ならば判官の側まで近寄るはずですが、なかなか近くに行きません。
演技後に淀五郎はどうして?と訊きますが「お前は役者だろ。そんなことも解らないのか?それなら本当に腹を切れ。お前みてえな下手な役者は腹を切って死んじまえ!」
淀五郎は園蔵を恨んで舞台で園蔵を刺して、本当に腹を切ろうと決心して、お世話になった中村仲蔵のところに別れの挨拶に行きます。
仲蔵からは上手く役をこなそうとして空回りしていることを指摘され、そんな自分に厳しい言葉を投げつけた園蔵の心中を察します。さらに判官が切腹する際の心情についても切々と説諭され、徹夜で稽古に励むと・・・
翌日の舞台
淀五郎の演技を見て喜んだ由良之助(園蔵)は近寄って判官(淀五郎)の前で平伏します。
そこで判官のセリフ
「うぉぉ・・・、ま・ち・か・ね・た~」
拍手喝采
泣けますね〜
私も稽古総見ではケレン味が出ないようつとめたいと思っております。
ちなみに私が大好きな落語家「黒門町」八代目桂文楽は最晩年、高座で失敗した時の謝り方も稽古していたそうです。
「申し訳ありません。もう一度、勉強し直して参ります」
これは実際に使われました。
深々と頭を下げて話の途中で高座を降りたそうです。
万が一の時はこれを使わせてもらおうかな・・・(笑)