「ボールがキューッとくるだろ」「そしてググッとなったらウンッっと溜めてパッ」
「ミスター」長嶋茂雄さんは「ゴジラ」松井秀喜さんを指導した時、打撃のコツをこう表現したそうです。
笑い話のように語られますが、おそらくミスターの中では正しく表現されているのだと思います。ただ松井さんにちゃんと伝わったかどうかはわかりません。
武術の伝書と言われるようなものは奥義に達していない人が読んでも全く理解できないと言われます。
秘匿すると言う意図もあったとは思いますが、私的にはミスターが松井さんに伝えた「打撃のコツ」のような感じではなかったかと思っています。
普段、師匠を感じながら稽古を積み重ねていき、最後の最後のところは口伝、もしくは師匠と弟子との手合せ。そして師匠は弟子が奥義に達したと判断すれば伝書を渡す。伝書に書かれていることは師匠と弟子が長年共にして来た稽古の集大成のはずです。
伝書には和歌や比喩で書かれていたり、簡単な人の絵や動物の絵で描かれているものもあります。おそらくそれで十分、と言うかそれでしか表現出来ないのだろうと想像します。
どこかで手に入れた伝書や巻物を後生大事にしている人もいるようですが・・・あまり意味があるようには思えません。
もちろん私は奥義に達しているわけではありませんが、今の段階でこれまで自分が習得したものを伝えようとした時にどんな伝え方になるのだろうかと考えたりします。
感覚やタイミングまで含めて丸々正しく伝えるのは大変難しいのです。
そう考えるとやはり究極は「拈華微笑」なのかもしれません。
「ニコッと笑いながらフワッと浮いてスーッスッと近寄ってゆるりと斬る」
ミスターならばこんな感じ?
わかってくれる人はわかってくれる・・・かも?