最良の道具

先日、私と同い年くらいの方とお話しする機会がありました。

その方は自転車(ロードバイク)が趣味だそうですが、周囲に止められているそうです。というのもこれまで自転車で三回も事故にあったからだといいます。

「私は交通法規は必ず守っているのになぜ・・・」とのこと。

 

よくよく話を聞くと、その方の乗っている自転車のタイヤの太さが25Cだというのです。

一般の自転車のタイヤの太さからするとかなり細めのタイヤです。

しかしその方は「25Cというのはロードバイクの標準です!」と言いきります。

 

確かにその通りです。

「しかし、その「標準」はロードバイクの「標準」であってあなたの「標準」ではありませんよ」・・・とは言えませんでした。

 

大変失礼ですが、その方の年齢、体形、身のこなしなどから推察すると、とても「標準」とは言えません。案の定、これまでマンホールの上で滑ったり、道路の隙間にタイヤを挟んだりして転倒したことがあったそうです。周囲がそのロードバイクに乗るのを止めるのもわかります。

 

そんな人と事故を起こしてしまった三人のドライバーに同情します。確かに交通法規は守っているのかもしれませんが、そんな自転車に乗った高齢者の後ろを走るドライバーは恐ろしくてたまったものではありません。

 

最近、金に糸目をつけず上級者用ロードバイクを買って乗り回している高齢者は多いように感じます。技量も体力も無い初級者が上級者用のロードバイクに乗って走ることがどれだけ危険なことか・・・

 

しかし、そんな私も以前に身の丈に合わない刀を購入したことがあります。

2尺5寸2分のやや長めの刀でかなり重さのある刀です。(それまで稽古に使っていた刀は2尺4寸2分でした)

 

しかし稽古でその新しい刀を使い始めるとどうにもいけません。せっかく購入したのにとの思いもありましたが、大ケガをしてからでは遅いと稽古での使用をあきらめました。それから7年間ずっと部屋の片隅で眠り続けていました。


ある日、使っていた2尺4寸2分の刀を修理に出さなければならなくなり、やむを得ず短期「代役」で「眠れる獅子」を出してみました。すると、なんともいい感じです。むしろこれまで使っていた刀よりも体に馴染む感覚でした。以降は今日までその「眠れる獅子」を使い続けています。

 

新しい刀は7年前の私の「技量」では使えなかったのだと理解しました。

もちろん、こうしたものには「慣れ」もあります。しかし7年後に刀を手にしてすぐに馴染んだことを考えると「慣れ」の問題ではなく「技量」の問題だったのだろうと考えています。

 

やはりその人の技量や体力に合った道具が「最良」なのだと知るべきです。