2020年3月24日の静稽録に「水目釘」という題で目釘のことを書きました。
そもそも目釘は斬る際の衝撃を抑え、刀身、柄、ハバキなどへの負担を減らす役割をしています。一般的には竹を使います。
竹には適度な粘りがあるので、折れにくく、またもし折れても竹の繊維が残り刀身が抜けにくくなります。
竹にもいろいろな種類があります。
現在の私の目釘は黒竹(クロチク)ですが、この黒竹は最近、植物の専門家である静稽会のMさんから譲っていただいたものです。
実は以前にもMさんから目釘を作る竹を譲っていただきました。
前の刀は重量級だったことから目釘穴が大きく一般的に目釘に使われる真竹では合うものが作れませんでした。
困っているとMさんから孟宗竹の根(希少)はどうかと譲っていただきました。
孟宗竹の根は厚さもあり、ものすごく硬くて削り出すのに苦労しましたが、重量のある刀にはピッタリでした。その刀は今も試斬刀として使っています。
それに対して黒竹は一般的には細身なので目釘にするには少し厚みが足りず難しいのですが、特別に厚みのある部分の黒竹をチョイスしていただきました。
黒竹は孟宗竹の根よりも柔らかく粘り気がある感じがします。
目釘穴に優しくフィットしていい感じに刀身を固定してくれます。
油を染み込ませて使っています。
目釘の材質には他にもいろいろあります。
以前の静稽録では「水目釘」を以下のように紹介しました。
「多数のナメクジを竹の筒の中に入れて、よく突いて混ぜ合わせるそうです。そうすると固まるので、それを竹から出して天日で乾燥させると石のように固くなり、これを目釘穴に合わせて削って使うそうです。唾を吹き込むと全く抜けなくなると言われています」
水目釘は慶応元年12月刊「劔甲新論」(作者 鈴木鐸)の中で実戦に適していると書いてあるのですが、ちょっと信じがたい・・・
しかも水目釘には独特のヌメリがあるそうです。
あ~絶対に使いたくない!
調べてみると鉄(生鉄=よく鍛えてない鉄)、鹿の角、鯨の髭、干したカタツムリ、革太鼓用の革を漆で固めた目釘などもあるそうです。
刀にもよりますが目釘は硬さだけではなく適度に粘度のある材質が良いみたいです。
さらに目釘穴はいくつが良いのか?
通常は一つです。私の差料も一つ。
目釘穴が二つある茎(なかご)は見たことがありますが・・・
目釘は二本あるのが良いとも聞いたことがあります。というのも実戦では刃以外では柄の破損が多いと言われていて、激しく使用する場合、目釘一本だとどうしても柄の中で茎が暴れてしまうということらしいです。
島津家久が鎖帷子を着た兵を七人斬ったという刀の刀身には目釘穴は縦に三つ、その下に左右へわかれ二つついていたそうです。
すごい!