私は顔に似合わず甘い物が大好きです。
昔は洋菓子ばかりでしたが、歳をとるにつれて和菓子の良さがわかってきたような気がします。
特にあんこは深い!と思うようになりました。
さて初心者の方々と稽古をしていると時々こんなことを言われます。
「その形はもう覚えました。違う形を教えて下さい。」
武術形の手順を覚えることはそれほど大変なことではありません。ダンスの振り付けの方がはるかに複雑で難しいと思います。
形の手順を覚えることが目的になってしまうともうそこには何もありません。
私はよくこんなことを言います。
「饅頭の皮はなんとか出来てきたようですが、あんこがまだですよね〜」
形稽古で難しいのは皮の中にしっかりとあんこを入れることです。
もちろん皮も美味しいですけどね・・・それでもやっぱり饅頭の命はあんこです。
「武術饅頭」の「あんこ」は何か?
私はその形を通じて術としての身体操作とその感覚を会得することだと思っています。
それは形を作った先達の思いや同じ形を稽古した古人の苦悩に触れることにもなります。そしてそこが形のすごいところだと思っています。
武術の身体操作感覚には子供の頃に初めて自転車に乗れた時のような喜びがあります。
本で「自転車の乗り方」を読んで頭で理解出来ても自転車を乗れたことにはなりません。
また補助輪がついた自転車では自転車が乗れたことにはなりません。
ペダルの軽さや風を切るスピード感やスリル、バランス、走りの滑らかさは補助輪を外してこそ味わえます。
倒れた時の痛みや怖さを乗り越えないと味わうことが出来ない体感です。
簡単に思える形ほど一見すると本質的な動きが分かりにくいので初心者の方は外側だけ似せたような動きで満足してしまいがちです。
更なる稽古の先に美味しい「あんこ」が待っていることを信じて、ぜひ根気強く稽古を続けてみてください。
皮だけでなく「あんこ」も食べて欲しい・・・「あんこ」の気持ちです。
ちなみに私はつぶあんが好きですが、今はこしあんも大好きです(笑)
あんこにもいろいろあります。