2023年4月3日の静稽録で「美貌の青空」と題して亡くなった坂本龍一氏のことに触れました。
約1年経って先日、「NHKスペシャル Last Days 坂本龍一 最期の日々」という番組を観ました。
病が発覚し、亡くなるまでの3年間を記録した手記や創作ノート、プライベート・フィルムなどの資料や映像を中心に坂本龍一氏が「最期の日々」と向き合う姿が映し出されていました。
「みかんが食べたい」
「松前漬けが食べたい」
少し安心しました。
希代の音楽家 坂本龍一「教授」でも命の限りを自覚するとやはり「食べたい」なんだ・・・
考えてみれば「食べたい」は命の源泉ですから、「食べたい」=「生きたい」は体からの最初の叫び声なのかもしれません。
おそらく私なんか死ぬ直前まで「食べたい」と言っていると思います。
その後、「死刑宣告だ」と絶望の淵を彷徨う坂本龍一氏。
「いま安楽死を選ぶか?」と苦悩が続きます。
映像で一番印象的だったのは部屋の中、上半身裸で小太刀木刀のようなものを一心不乱に「廻剣素振り」をしていた映像です。
それはいわゆる一般的な素振りではなく、まさに「廻剣素振り」でした。
誰から習ったのでしょうか?
そして「廻剣」で斬っていたのは「死」への念?それとも「生」への念?
やがて
「音楽だけが正気を保つ、唯一の方法かもしれない」
「残す音楽、残さない音楽」
最期が近づくにつれて彼の表情が少し和らいでいったと感じたのは気のせいでしょうか。
削ぎ落とした先に残ったものを確認して安心感に包まれているような顔でした。
私が自分の命のロウソクの燃え尽きる先を自覚したらどうなるか?
・・・まずは大福を食べて
・・・廻剣素振りでしょうか?