久しぶりに旧友と会うと、いつの間にか老化や病気の話ばかり・・・
よくある話です。
どうも歳をとると自分の体が思う様にならなくなるらしい・・・
2021年8月28日付け静稽録「老残武蔵」で藤沢周平「二天の窟」という作品を紹介しました。リアルな老年の宮本武蔵が描かれています。
「武蔵は前を見おろした。さっき思わず息をつめたときに小水がとまって、武蔵の陽物はかすかな痛みをとどめたまま垂れさがっている。−中略−じっと立っている足がくたびれて来たころに、たらたらと二、三滴の小水がこぼれ落ちただけだった」(再録)
そう言えば男性の老化の進行はまず、目に来て、歯に来て、最後に・・・
実は「ゴットファーザー 2」にも同じような話が出てきます。
マイケル・コルレオーネがユダヤ系ギャングの大物、ハイマン・ロスと対面する場面です。
「気分はどうですか?」
「最悪だ。楽に小便できたら金など要らん」
さらにロスはこんなことも言います。
「健康がいちばん大切だ。成功より金より力より」
すべてを手に入れた権力者が言うと言葉の重さが違います。
稽古場でそんな話をしていたらHさんが
「そう言えば、映画『隠し剣 鬼の爪』の中で、緒形拳演じる家老が尿意に襲われて厠に駆け込んだものの「あぁ、あぁ……いばり(尿)が出ぬ」と苦しんでいましたね〜」
ピッタリの間合いで追い討ちを掛けてくれました。
しかもキッチリ藤沢周平の作品で締めくくってくるのはさすがです。
どんな人でも老化からは逃げられません。
それは武術の達人も同じです。
「神速」と言われた黒田鉄山氏も長期療養の末に先ごろお亡くなりになったそうです。
武術を志す者なら誰でも憧れるあの消える動き。しかも年を重ねるほど技は精妙になり進展を続けていたと聞きしました。
「力に頼らない、体に負担をかけない動き」というキャッチフレーズがキッカケで始めた古武術の世界です。
実はその稽古の成果が最大限に発揮されるのは若い時よりもむしろ老剣士になってからなのかもしれません。
老剣士はやがて行きつく先が見えているからこそ、いろんな戦い方も心得ています。
藤沢周平風に言えば「捨命剣老い風」・・・ですかね(笑)