居合稽古の一つに「腹抜き」という稽古があります。
腹のあたりで左右に刀を抜きます。
いやその表現は正しくありません。
説明が難しいですが、ある達人は「腹で鞘を割る」ように抜くと表現していました。
言われてみれば確かにそうかもしれません。
そんな訳でこんな稽古をやってみました。
さすがに鞘を割るわけにはいきませんので、本気で腹で木刀を割ってみてくださいと言いました。もちろん割れませんが(笑)
しかしその時の体の使い方が「腹抜き」に近い動きです。
そこからさらに先に進むと刀を抜くことの難しさが身に染みます。
まず抜こうとする場所から意識を外します。この意識を外すということ自体が大変重要です。
抜こうとする場所に意識が止まると手の内も固くなって難しさが増します。
動かそうとする場所から意識を外すのは「腹抜き」だけに限りません。
例えば首を回す時に鼻を意識したりするとよりダイナミックに動かすことが出来たりします。
「腹抜き」の場合は肩甲骨であったり、肩関節であったり、股関節であったり、膝関節であったり・・・
「腹抜き」が手元から意識を外して出来るようになるまでには時間がかかります。
居合は動かそうとする場所から動かすことはほとんどありません。むしろ遠いところから動かしていくことが多いと感じます。
例えば立った状態で右脚を外旋させるために左股関節を使ったりします。それぞれ意味が違う場合もありますが、動かす場所から意識を外して動かすというところは共通しているように思います。
稽古場ではよくこんなことを言います。
右を動かすには左を
上を動かすには下を
表を動かすには裏を
もちろん居合の運動原理と言う面もありますが、意識が及ぼす人の体の反応の不思議さを感じるところでもあります。
さらにこれらは敵対動作という面からも意味を持ちます。