あしうら考

2021年2月23日の静稽録に「舞踏(butoh)」のことを書きました。

元々舞踏があった私には武術の場合もやはり「踏」は気になります。

 

昨年の稽古総見では個人的に立身流を研究テーマに稽古しました。

立身流には「蹈足」(ふみあし)という重要な基本動作があります。

「踏」ではなく「蹈」とこだわります。

 

「踏」は歩くと関係なく踏みつける動作なのに対して「蹈」は歩き動く足を地につける動作だと言います。

「蹈足」は難しい動作です。

 

踏む時に地に接するのは「足裏」ですが、是風会の高無先生はそこに「蹠」(あしうら)という漢字を使います。

 

高無先生は以前こんなことを書いてました。

 

「私は、地球上においていつどこでも働いている、そして誰にでも感じられる力として重力を最もたしかな拠り所としています。

そしてその重力を具体的に感覚しているのは、おそらくは土台に対する反作用を感じる圧力感覚でしょう。

 

重力を最もよく受け、重力を把握する土台を構築しているのが地面であり、それと接している蹠(あしうら)です。

 

蹠の接地感をどのように感じ、受容しているかが、立っている時、立って運動している時のあり方の基底になっていると考えられます。

 

武術においてとても大切なこの要素は、おそらく他の運動分野においても同じくらい大切なものだろうと思います。」

 

「蹠」は音読みでは「せき」や「しょ」となります。

 

「蹠行」(しょこう)は足の裏を踵まで地面につける歩き方です。

この歩き方は速くは走れませんが、直立の安定性はあります。

ヒトやサル、クマなどがこれになります。

 

「蹠行」の他に「趾行」(しこう)というのもあります。

「趾行」は踵をあげて、足先だけを地面につける歩き方です。

「蹠行」に比べて安定性は失われますが速く走れます。

ネコやイヌなどがあたります。

 

この他にも「蹄行」(ていこう)というのもあります。こちらは爪だけを地面につける歩き方です。

ウマやイノシシ、シカがあたります。

 

中には歩く時は踵までつける歩き方で、走る時は足先だけをつける走り方をする動物もいて「半蹠行」というらしいです。イタチやアナグマなどです。

 

ちなみに肉球のことを趾蹠(しせき)とも言うそうです。

 

「あしうら」の使い方の違いはヒトでは狩猟か農耕か、体の大きさなどとも関係しているのか?などと想像したりします。

 

宮本武蔵の五輪書水の巻に「足つかひの事」というのが書かれています。

 

一 足つかひの事

 

足の はこひやうの事 つまさきを少うけて きひすをつよくふむへし 足つかいは ことによりて大小遅速はありとも 常にあゆむかことし

 

 

「常にあゆむ」「足つかひ」は「蹠」と切り離すことは出来ません。

 

思い浮かぶことをつらつらと書いてしまいました。

 

舞踏から続く「あしうら」の感覚を養う稽古はこれからも続けていきたいと思っています。